土岐、多治見、瑞浪、恵那、中津川。東濃は坂の多い土地で、道から少し上がったところに玄関がある家も、めずらしくありません。段を数段のぼって、アプローチを歩いて、ようやく玄関にたどりつく。そんな家では、冬になると、朝の足元が少し気になってきます。
底冷えするこの土地では、夜のあいだに濡れたところが凍って、朝いちばんに、地面がうっすら白くなっていることがあります。坂の上の玄関は、その「坂」と「底冷え」が、ちょうど重なる場所。出かける人だけでなく、家にいる時間の長い家族にとっても、毎朝いちばんに踏む一歩の話です。今日は、冬の朝でも安心して踏める、坂の上の玄関まわりの足元について、考えてみたいと思います。
冬の朝、坂の上の玄関は、どこが滑りやすい?
先に結論めいたことを言うと、気をつけたいのは、水がたまって凍るところと、体重ののる段差のふちです。
夜露や雪どけの水は、いつもどおり低いほうへ流れていきます。その水が、平らでくぼんだところや、段の下に残ったまま、朝の冷えこみで薄く凍る。坂の上の玄関は、アプローチにもともと傾きがあるぶん、水が集まりやすい場所ができやすいのです。だから「玄関の階段が凍る」のが気になるときは、まず、どこに水が残っているかを、朝、目でたどってみる。凍っているのは、たいてい水が引ききれずにいたところです。
もうひとつは、段差です。階段をのぼりおりするとき、足はどうしても段のふちに体重をかけます。そこが濡れて凍っていたり、つるりとした仕上げだったりすると、ふっと足が逃げる感じがして、ひやりとする。坂の上の家では、道路から玄関までの高さの差を、階段やスロープで受けていますから、このふちの足元を、冬のあいだ安心して踏めるようにしておけると、朝がずいぶん楽になります。
アプローチを滑りにくくするというのは、派手なことをする話ではありません。水を残さないことと、足の裏がとどまる肌をえらぶこと。その二つが芯にあるように思います。
アプローチや階段の土間は、どんな仕上げにする?
結論から言うと、つるりと磨いた肌より、少しざらつきのある肌を選んでおくと、冬の朝が安心です。
外の土間コンクリートの仕上げには、いくつか肌の種類があります。表面にこまかい筋目をつける刷毛引き、小さな玉砂利を浮かせる洗い出し。どちらも、濡れたときや凍った朝に、足の裏がとどまりやすい肌です。このあたりの仕上げの違いは、坂のまちの駐車場でもくわしく触れました。駐車場で効くこの考えは、そのまま玄関のアプローチや階段でも効いてきます。
屋外にタイルを使うときも、同じ見方でえらべます。タイルには、室内向けのつるりとしたものから、外の床向けに、表面がざらりとして雨の日でも足がとどまりやすいものまで、いろいろあります。玄関まわりのように、雨や霜で濡れる場所には、屋外用の滑りにくいタイルを選んでおくと、冬の朝でも足元が落ち着きます。
見た目の美しさと、足元の安心は、どちらか一方をあきらめる話ではありません。つるりと磨いた仕上げが映える場所もあれば、ざらりとした肌が向く場所もある。毎朝かならず踏む階段やアプローチには、後者の肌を選んでおく。そんなふうに場所ごとに肌を選び分けていくと、冬の玄関まわりが、ぐっと歩きやすくなるように思います。
手すりと段差は、どうしておくと踏みやすい?
足元の肌とあわせて、手でつかまれるものがあると、冬の朝の安心はまた一段ちがってきます。
外構の手すりは、玄関の階段やスロープにそえておくと、のぼりおりのときに体を預けられて、ふっと足がすべりそうになったときも、手が支えてくれます。とくに、荷物を持って出る朝や、暗いうちに出る冬の時間帯には、つかまれるものが一本あるだけで、踏み出しがずいぶん落ち着きます。家にいる時間の長い家族にとっても、毎日の一歩が楽になる手だと思います。
段差そのものも、少し見直しておけると安心です。一段の高さがそろっていて、足をのせる踏み面にゆとりがあると、のぼりおりのリズムが乱れにくく、冬の朝でも踏みはずしにくくなります。坂の上の家は、道路との高さの差が大きいぶん段数も多くなりがちですから、一段一段を、無理なく踏める寸法にしておけると、その差が毎朝効いてきます。
そして、足元のあかりです。冬は日の出が遅く、暗いうちに玄関を出る朝もあります。アプローチや階段の足元を、小さなあかりで照らしておくと、どこに段があるか、どこが濡れているかが見えて、それだけでも安心して踏めます。
今ある玄関にも、後から足せる手はありますか?
あります。新しく作りなおさなくても、いまの玄関にそえられる手は、いくつもあります。
まず、手すりです。外構の手すりは、あとからでも、階段やアプローチにそって取りつけられることが多いです。「のぼりおりのここが不安」という一か所に、つかまれるものを一本足すだけでも、冬の朝の心もちがずいぶん変わります。
足元の滑りにも、後から足せる手があります。いまあるタイルや土間の上に、滑りにくくする材をそえたり、毎朝かならず踏むひとすじだけ、足のとどまる肌に整えたり。全部を作りなおさなくても、いちばん通る動線から手を入れていけば十分なことも多いように思います。
そしていちばん手前にあるのが、水を残さないことです。凍るのは、水が引ききれずにいたところ。アプローチの水がどこへ流れて、どこにたまるのかを見ておいて、たまりやすい場所の水を逃がしておくと、そもそも凍りにくくなります。底冷えと凍結との付き合い方は、底冷えの東濃のほうでも書きました。坂の上の玄関では、その「水を切る」考えが、足元の安心にそのままつながってきます。
大きな工事を考える前に、いま不安な一歩に、まず一手。そこから始められるのが、玄関まわりのいいところだと思います。
坂の上の玄関で、冬の朝を安心して
坂の上に住むということは、道路との高さの差と、毎日つきあうということです。そこに東濃の底冷えが重なる冬の朝は、玄関まわりの足元が、いちばん気になる場所になります。
でも、やることの芯は、そう多くありません。水を残さず、凍りにくくする。足の裏のとどまる肌を、毎朝踏む場所に選ぶ。つかまれる手すりを、不安なところに一本そえる。暗い朝の足元を、小さなあかりで照らす。どれも、大げさな工事というより、暮らしの足元にそえる、ちょっとした心づかいです。
冬の朝の一歩は、その家に住む人みんなの、毎日の一歩です。坂の上の玄関でも、安心して踏み出せる足元を、東濃の冬とつきあいながら、少しずつ整えていけたらいいですね。
よくある質問
屋外のアプローチを、滑りにくくするにはどうすればいいですか?
芯になるのは、水を残さないことと、足のとどまる肌を選ぶことです。アプローチにたまった水は、朝の冷えこみで凍りやすいので、どこに水が残るかを見て、たまりやすい場所の水を逃がしておくと凍りにくくなります。あわせて、土間コンクリートなら刷毛引きや洗い出しのように少しざらつきのある仕上げ、屋外タイルなら外の床向けの滑りにくいものを、毎朝踏む場所に選んでおくと、冬の朝でも足元が落ち着きます。
玄関の階段が冬に凍るのが心配です。何から考えればいいですか?
まず、どこが凍っているかを朝に見てみてください。凍るのはたいてい、水が引ききれずに残っていたところです。その水の逃げ道をつくって残さないようにするのが、いちばん手前の手です。あわせて、段のふちの足元を滑りにくい仕上げにしておくことと、のぼりおりのときにつかまれる手すりをそえておくことで、踏み出しがぐっと落ち着きます。段の高さがそろっていて踏み面にゆとりがあると、冬の朝でも踏みはずしにくくなります。
今ある玄関に、手すりや滑り止めは後から付けられますか?
多くの場合、後からでも足せます。外構の手すりは、いまある階段やアプローチにそって取りつけられることが多く、「ここが不安」という一か所からでも始められます。足元の滑りにも、いまあるタイルや土間の上に滑りにくくする材をそえるなど、後から足せる手があります。全部を作りなおさなくても、毎朝かならず通る動線から手を入れていけば十分なことも多いので、いちばん気になる一歩から考えてみるのがよいと思います。