東濃の暮らし

霧の朝が多い土地で——北側の庭が乾かない話

盆地に低くたれこめる朝霧(イメージ)

土岐、多治見、瑞浪、恵那、中津川。東濃の朝は、季節が深まるほど白くけむることがあります。山あいの盆地に冷えた空気がたまり、川の上や田んぼの上に、朝霧が低くたれこめる。車で走ると、谷あいだけ霧が残っていて、坂を上ると急に晴れる——そんな朝を、このあたりに暮らした人なら何度も見ていると思います。

その霧が引かないうちに、日はもう低い。十一月をすぎると、太陽は空の低いところを通っていくので、一日じゅう日の差さない場所が、庭のなかにできてきます。とくに建物の北側。「玄関のタイルが、朝になると滑る」「北の犬走りに、うっすらコケが出てきた」「ウッドデッキが、昼になっても乾かない」そんな困りごとが顔を出しはじめるのが、ちょうどこの季節です。今日は、その「乾かなさ」の正体を、日照と風という原因のほうからほどいてみます。

盆地に低くたれこめる朝霧(イメージ)

なぜ、北側の庭は乾かない?

先に結論めいたことを言うと、北側が乾かないのは、「日が当たらない」ことと「風が抜けない」ことが重なるからです。どちらか片方ではなく、両方がそろうと、地面はなかなか乾きません。

日は、濡れた地面をあたためて水を蒸発させてくれます。けれど東濃の冬の太陽は低いので、建物の北側には光がまわりこみにくい。朝霧で一度しっとり濡れた地面が、日に照らされないまま昼をすぎていく。そこへ、塀や隣家に囲まれて風が抜けにくい場所だと、蒸発した水分の逃げ道もなくて、じめじめが長く居すわります。

だから、北側の庭の日陰の湿りは、その場所が「悪い」というより、光と風という二つの条件が、たまたまそこで欠けている、というだけの話です。そう考えると、打てる手も見えてきます。日を少しでも入れられないか、風の通り道を一本つくれないか——乾かなさの原因を光と風にほどいておくと、あとの工夫がずっと考えやすくなるように思います。

玄関タイルが滑るのは、なぜ?

朝、玄関のタイルが滑って、ひやりとする。その多くは、タイルそのものより、表面にのった水の膜と、うっすらしたコケやぬめりが原因です。

濡れて日陰にコケの出た北側の石畳(イメージ)

霧や夜露で濡れたタイルは、乾ききらないうちに次の朝をむかえます。濡れた状態が続くと、日陰では表面にコケや藻がうすく張り、そこに水がのると、足の裏がつるっと逃げる——これが北側の玄関で起きやすい滑りです。

ここで、少しだけ棲み分けの話をさせてください。おなじ「滑る」でも、坂の多い東濃の駐車場で気になる滑りは、勾配(傾き)や凍結が主役でした(このあたりは「坂のまちの駐車場」でくわしく触れています)。冬の凍った朝の足元の心配は、底冷えと凍結の話につながります(「底冷えの東濃」で書きました)。今日の玄関の滑りは、それとは軸が少し違って、勾配でも凍結でもなく、日陰の湿りとコケが主な相手です。相手が違えば、効く手も変わってきます。凍結なら水を切って冷えをやわらげる、湿りとコケなら日と風を通して乾かす——自分の家の滑りが、どちらの相手なのかを見分けておくと、手の打ちどころがはっきりします。

コケやぬめりとは、どう付き合う?

外構にコケが出てくると、なんだか手入れを怠ったように感じてしまうかもしれません。でも、日陰と湿りがそろった場所にコケが出るのは、ごく自然なことです。こわがって根こそぎにする話ではなく、ほどよく付き合っていく、くらいの気持ちでちょうどよいように思います。

付き合い方の芯は、三つくらいです。

ひとつは、日と風を少し通すこと。北側でも、伸びすぎた枝を軽く払ったり、目隠しの一部を風の抜ける造りにしたりすると、地面が乾く時間が生まれて、コケの居心地が少し悪くなります。

ひとつは、水を切ること。濡れが長く残る場所は、水がたまらないように逃がしておく。ほんのわずかな傾きで水が引くだけでも、乾きははやくなります。

そして、年に一度の手入れ。コケやぬめりは、出はじめのうちにブラシや水で落としておくと、そのあとがずっと楽になります。落ち葉の季節が過ぎたころ、一年に一度、北側をさっと見てまわる。それくらいの手間で、玄関まわりの足元は、だいぶ落ち着いてくれるように思います。

乾きにくい場所の材は、どう選ぶ?

ウッドデッキが乾かない、と気になる方も多いと思います。北側や木陰のデッキは、雨や霧のあと乾くのに時間がかかり、その濡れた表面が、ときどき滑りのもとになります。

日陰で乾きにくい、濡れたウッドデッキ(イメージ)

ここでも、大切なのは「その材が良い悪い」ではなく、「その場所に合う肌かどうか」です。天然の木には木のあたたかみがあり、樹脂の板には手入れのしやすさがあり、タイルや石にはそれぞれの表情があります。どれもよさがあって、下げる相手はどこにもいません。選ぶときの物差しは、日の当たり方と、乾きやすさ、そして足元の肌ざわりです。

日陰になりがちな場所なら、濡れても足がすべりにくい、少しざらつきのある肌の仕上げを選んでおくと、朝が気楽です。ウッドデッキ 滑り止めの溝が入った板や、表面がつるつるしすぎない材、玄関タイルなら、雨の日でも足が逃げにくいざらり肌のもの——そんなふうに、日陰と湿りという条件に合わせて肌を選び分けていくと、乾きにくい場所でも、長く気持ちよく使えるように思います。

つるりと磨いた美しい仕上げは、日のよく当たる乾きやすい場所でこそ映えます。場所ごとに、その肌が向く向かないを見当づけて選んでいく。それだけで、北側の外まわりはずいぶん歩きやすくなるように思います。

霧の土地の、北側との付き合い方

朝霧が低くたれこめ、日が低くまわる。東濃の外構を考えるとき、この土地の北側は、たしかに乾きにくい場所です。

でも、乾かなさの正体が光と風だとわかれば、打てる手はいくつもあります。日を少し入れ、風の道を一本つくり、水を切っておく。足元には、濡れてもすべりにくい肌を選ぶ。コケが出たら、年に一度さっと落としてやる。どれも、大げさな工事ではなく、暮らしのなかのちょっとした心くばりです。

霧の朝は、この土地の景色のひとつです。その霧と、日の短い季節と付き合いながら、北側の庭も、玄関も、デッキも、長く気持ちよく使っていけたらいいですね。

よくある質問

北側の庭が、いつまでも乾かないのはなぜですか?

日が当たらないことと、風が抜けないことが重なるからです。冬の東濃は太陽が低く、建物の北側には光がまわりこみにくいうえ、朝霧や夜露で一度濡れた地面が乾かないまま昼をすぎていきます。そこへ塀や隣家に囲まれて風が抜けにくいと、じめじめが長く居すわります。逆にいえば、日を少し入れる、風の道を一本つくる、水を切っておく——このどれかで、乾く時間は生まれます。

玄関のタイルが、朝に滑るのが気になります。

濡れたタイルの表面に、うっすらコケやぬめりがのっていることが多いです。日陰で濡れが長く残ると、コケや藻がうすく張り、そこに水がのると足がすべりやすくなります。凍結や勾配による駐車場の滑りとは相手が少し違って、こちらは日陰の湿りとコケが主役です。日と風を通して乾かす、水を切る、年に一度コケを落とす、そして雨の日でも足が逃げにくいざらり肌のタイルを選ぶ——このあたりが手の打ちどころになります。

ウッドデッキが乾かず滑るのは、どうすればいいですか?

北側や木陰のデッキは、雨や霧のあと乾くのに時間がかかり、濡れた表面が滑りのもとになることがあります。材そのものの良し悪しというより、その場所に合う肌を選ぶことが大切です。日陰になりがちな場所なら、滑り止めの溝が入った板や、表面がつるつるしすぎない仕上げを選んでおくと、朝が気楽です。あわせて、まわりの風の通りをよくして乾く時間をつくると、なお落ち着きます。どんな材や造りが向くかは、日の当たり方や置き場所で変わるので、迷うときは施工した先に一度たずねてみるのもよいと思います。