東濃の暮らし

陶器のまちの土は、なぜ庭を難しくするのか

植え付け前の庭の土と苗(イメージ)

土岐、多治見、瑞浪。このあたりを歩くと、焼き物の看板や窯元の煙突が、暮らしの風景にとけこんでいます。美濃焼が千年の産地として続いてきたのは、たまたまではありません。この土地に、器の材料になる良質な土——粘土が、豊かに眠っていたからです。

焼き物を育てたのは、この土でした。けれど庭の現場に立つと、その同じ土に、少しばかり手を焼くことがあります。器を生んだ土地の土が、庭づくりでは水はけの悩みになって現れる。今日は、その表と裏の話をしてみたいと思います。

美濃焼の器(イメージ)

器になる土と、庭に困る土

粘土というのは、こまかい粒がぎゅっと詰まった土です。粒のすき間が小さいぶん、こねれば形になり、焼けば固くしまる。器の材料としては、これ以上ない性質だと言えるのかもしれません。

ところがこの「すき間が小さい」という同じ性質が、庭では逆に働きます。水は、土の粒のすき間を通って地面へしみこんでいくもの。すき間がつまった粘土質の土では、その通り道が細く、水がなかなか下へ抜けていきません。

同じ土の、表と裏。器を育てるときは長所になり、庭を育てるときは短所として顔を出す。東濃の庭が少し手強いと言われることがあるのは、このあたりに理由があるように思います。

うちの庭の水はけ、どう見分ける?

むずかしい道具がなくても、少し観察すれば見えてきます。自分の家の土が水はけのいい土か、そうでないか。いちばんわかりやすいのは、まとまった雨が降った翌日の庭です。朝になっても、あちこちに水たまりが残っている。土を踏むと、ぐちゅっと沈んで靴が汚れる。半日たっても、日陰の地面がじめじめしている。

雨あがり、赤土に残る水たまり(イメージ)

こういう庭は、水が下へ抜けにくい土なのかもしれません。逆に、雨がやんでしばらくすると水が引き、土の表面がすっと乾いていくなら、水はけには恵まれているほうだと考えていいように思います。

雨あがりの庭を一度ゆっくり眺めてみる。それだけで、その土地の土の性格が、けっこう見えてきます。

水はけが庭に落とす、小さな影

水がうまく抜けない土は、暮らしの中でいくつかの形で顔を出します。

たとえば、植えた木や草花の元気がない。根が育つあたりに水がたまり続けると、根が息をしにくくなって傷むことがあります。「よかれと思ってこまめに水をやったのに、かえって元気がなくなった」という声を聞くことがありますが、もともと水の抜けにくい土だと、そういうことも起こりうるようです。

芝生の育ちにムラが出るのも、水はけと無縁ではありません。水がたまりやすい低いところだけ元気がなかったり、反対に乾きやすいところだけ枯れやすかったり。庭のあちこちで様子が違うときは、足元の土が場所によって表情を変えているのかもしれません。

水はけが悪い庭は、どうすればいい?

水はけの悪い土でも、いい庭はつくれます。手だては、いくつもあります。

土そのものに砂や堆肥のような材料を混ぜて、水の通り道をつくる「土壌改良」。地面の下に水の抜け道を仕込んで、たまった水を逃がす「暗渠(あんきょ)排水」。地面にゆるやかな傾きをつけて、水が自然と一方へ流れるようにする「水勾配」。植える場所だけ土を高く盛って、根を水から遠ざける「高植え」。

高植えの花壇と、まわりの砂利排水(イメージ)

ここでは名前を挙げるだけにとどめておきます。どれが向いているかは、土の性質、庭の広さ、まわりの地形、そして何を植えたいか——そうした条件しだいで、まるで変わってくるからです。「この土地ならこの工事」と一口には言えないのが、ほんとうのところだと思います。

土地の物語として、庭を見る

大事なのは、水たまりの残る庭を「困った土」と決めつけないことなのかもしれません。

その水はけの悪さは、この土地が焼き物のまちとして千年続いてきたことの、いわば裏返しでもあります。器を育てた土と、庭を育てる土。性質は同じでも、見せる顔が違うだけ。そう思うと、少し愛着がわいてきます。

自分の庭の土がどんな性格をしているのかを知っておく。そのうえで、庭にどこまで手を入れるかを考えていく。陶器のまちに暮らすということは、そういう土との付き合い方を、少しだけ知っておくということなのかもしれません。

よくある質問

庭の水はけが悪いかどうかは、どう見分けますか?

まとまった雨が降った翌日の庭が、いちばんの手がかりです。朝になっても水たまりが残っている、土を踏むとぐちゅっと沈む、半日たっても日陰がじめじめしている——こういうときは、水が下へ抜けにくい土なのかもしれません。反対に、雨がやんでしばらくすると水が引き、表面がすっと乾いていくなら、水はけには恵まれているほうだと思います。

東濃の土は、なぜ水はけが悪いことがあるのですか?

美濃焼を千年支えてきた良質な粘土が、この土地には豊かに眠っています。粘土はこまかい粒がぎゅっと詰まった土で、器の材料としては申し分ないのですが、粒のすき間が小さいぶん、水の通り道が細くなります。器を育てた土が、庭では水はけの悩みとして顔を出す。同じ土の、表と裏のような関係だと思います。

水はけの悪い庭は、どう手を入れられますか?

手だては、いくつもあります。土に砂や堆肥をまぜて通り道をつくる土壌改良、地面の下に抜け道を仕込む暗渠排水、ゆるやかな傾きで水を流す水勾配、植える場所だけ土を高く盛る高植え。どれが向くかは、土の性質や庭の広さ、まわりの地形、何を植えたいかで変わってきます。一口には決められないので、庭の様子を見ながら選んでいけたらと思います。